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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)3186号 判決

主文

本件上告を棄却する。

被告人小木曽京三に対する当審の訴訟費用は同被告人の負担とする。

理由

被告人小木曽京三の上告趣意について。

所論は事実誤認並びに法令違反の主張であって刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

同被告人の弁護人竜前茂三郎の上告趣意について。

所論はいずれも単なる法令違反の主張であって適法な上告理由にあたらない。

被告人金谷勇の弁護人高木廉吉の上告趣意について。

刑法二四六条一項に定むる財物の騙取とは犯人の施用した欺罔手段により、他人を錯誤に陥れ、財物を犯人自身又はその代人若しくは第三者に交付せしむるか或はこれ等の者の自由支配内に置かしむることを謂うのであって(論旨引用の大正一二年(れ)一二七二号同年一一月二〇日大審院判決大審院判例集二巻八一六頁)原判決も亦本件について「被告人小木曽京三が判示服部伊勢松に虚言を弄し、同人をしてその旨誤信させた結果同人をして任意に判示の現金を同被告人の事実上自由に支配させることができる状態に置かせた上でこれを自己の占有内に収めた事実であるから刑法二四六条一項に該る」と判断しているのであって、大審院判決と相反する判断を示めしたものではない。(前記判決を除くその他の引用に係る大審院判決は何れも本件に適切でない。)されば原判決が本件について右服部伊勢松が被告人小木曽京都三の判示の欺罔手段に基き判示の現金を同被告人の自由に支配できる状態に置く意思で判示の玄関上り口に置いたものと認定したことの当否は格別、原判決が大審院判例と相反する判断をしたとの論旨は理由のないこと明らかである。

なお記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって刑訴四〇八条、一八一条(但し被告人小木曽京三について)を適用し全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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